「信州高遠」と言えば「天下一の桜」・・・というのはご存知の方も多いのではと思いますが、「信州そば発祥の地」というのはどうでしょうか?実は私は十数年前この地に越してきた時にはどちらも知りませんでした。
東京に住んでいた頃は、街に蕎麦屋がたくさんあってよく食べました。店構えかどこか粋だったり、おじさん達が行列を作っていたり、何だかピピっとくると取り敢えず入って食べてみます。
更科の白くて透けるような蕎麦が大好きだった私は、引っ越す度に近くに更科の美味しい蕎麦屋はないかと探したものでした。
ところが、利彦と結婚して岡山に行くと蕎麦屋が見当たりません・・・うどん屋のメニューの片隅に蕎麦があったりします(・・・でも、うどんがもの凄く美味しくて驚き!)。
そして、2000年に高遠に住むことになり蕎麦と再びお近づきに。
ところで、対照的な感じのある「うどん」と「蕎麦」ですが、器もそんな気がします。勝手なイメージですが、うどんは大きな器がどーんとひとつ、蕎麦は色々な器がちょこちょこと・・・どちらも器まで気を配られた店だと私は食べるのが遅くなります。味覚に視覚に嗅覚に・・・色々が楽しくなってのんびりモードに入ってしまう。おもてなしの心って凄いなぁ。
写真は、高遠で知り合った山根さんが蕎麦を打つ店「壱刻(いっこく)」から注文をいただいた「湯筒(そば湯入れ)」です。麻布を漆で何枚も何枚も重ねていく「乾漆(かんしつ)」という技法で作っているので、言ってみれば漆の塊です。毎日熱いそば湯を入れられてもびくともしない堅牢さと、乾漆ならではの柔らかいフォルムは利彦が一番こだわった所です。129年前の土蔵を改装して作ったという店は、陰影があり錫の色も本当によく似合うと思いました。
こだわるといえば、山根さんの蕎麦は面白い!蕎麦に「面白い」という表現をしたくなるのも面白い話ですが、彼は蕎麦の挽き方や打ち方を変えて何十種類もの蕎麦を作ります。